決算書は誰のために作るのか。視点を増やすレンズ
決算書の提出先は税務署だけではありません。融資を受けている企業は銀行から毎年決算書の提出を求められます。
「税務署に提出する決算書」、「金融機関に提出する決算書」という視点。そして「経営に役立つ決算書」と いくつかのレンズ(モノの見方)をご紹介します。
先んじて金融機関の信頼を得る。このひと工夫
毎期決算が終わると金融機関から決算書の提出を求められます。この “求められる”という言葉の受け取り方を変えてみましょう。
つまり、 求められる前にこちらから提出する という発想の転換です。
また併せて支店長や担当者に決算説明も行います。経営者が信頼感を勝ち取る工夫のひとつです。
信頼を得るいくつかのスパイス – 違いのわかる決算書
以下にチェック項目をまとめました。参考にしてみてくださいませ。
決算書への工夫
□ キャッシュフロー計算書を添付する
□ 勘定科目内訳書はできるだけ詳細に記入する
□ 不良債権を処理した事実を計上し透明性を向上させる
社長の説明の工夫(損益計算書および未来の説明)
□ 業界、同業他社の動向
□ 主力商品の動向
□ 主力得意先の売上推移、今期の見込み
□ 管理体制、製品クオリティーの改善取り組み状況と評価
□ 人材育成に対する取り組み
経理担当者の工夫(貸借対照表および過去の説明)
□ 借入の必要性の数字的裏付け
□ 利益予測・返済計画の信頼性に関する見解
□ 財務体質改善について会計事務所と話し合いをもってること
金融機関が重視する主な経営指標
融資を受ける前に、自社の経営指標を見てみましょう。期中から金融機関から見て好ましい指標を意識して経営を行うことが大切です。
好ましい会社 |
好ましくない会社 |
|
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流動性 流動資産÷流動負債×100 |
当座・流動比率が高い (預金などの換金性の高い資産が多い) |
当座・流動比率が低い (土地、建物などの換金性の低い資産が多い) |
安全性 純資産÷総資産×100 |
自己資本比率が高い | 自己資本比率が低い |
安全性 純資産÷総資産×100 |
売上・利益が増大している | 売上・利益が減少している |
返済能力 借入金÷(営業利益-減価償却費) |
債務償還年数が短い | 債務償還年数が短い |
借入をする際の必要知識
借り入れを行うための一般的な目安は次のようになっています。最近では数字だけでなく経営者のやる気や実現可能性の計画書、さらには社員の士気なども評価の対象になってることにご留意ください。
□ 借入限度額の目安
― 当期利益の10倍~20倍程度
― 年商の1/2
※ 支払税金の15~30倍程度
□借入可能な財務状態:次のすべてを満たすこと
― 2期連続で赤字ではない(損益計算書)
― 債務超過ではない(賃借対照表)
― 税金の未納がない
いかがでしたか。あなたにとってなにがしかのヒントになればうれしいです。
symphony は、融資を受けやすくする決算書の作成および銀行からの評価アップの実践手法と対策のご支援をしています。金融機関が気にされるであろうポイントをまとめます。
融資を受けやすくする決算書作成のポイント
決算書は粉飾をしてもすぐにわかってしまいます。より分かりやすく会社の実情を表現する決算書にすることが大切です。
□ 決算書をよりよく見せるための手法
― 役員借入金と銀行借入金を独立表示する
― 製造原価項目のチェックを行い売上総利益の改善を図る
― 棚卸資産を減らす
― 決算期を売上の少ない月に変更する
― 手形割引をやめて長期借入金へ転換する
□ 決算書の減点ポイント
― 減価償却を行っていない
― 毎期同じ売掛金が計上されている(不良債権)
― 役員貸付金、仮払金、立替金が計上されている
― スポットの利益が経常利益になっている
□ 赤字に転落しそうな場所
― 翌年度に借り入れが厳しいことを見込んで決算前に借りておく
― 翌期に黒字化できるように、当期にマイナス要素をすべて取り入れる
― 3期連続赤字だけは絶対に避ける
付記)自社にあった金融機関とのお付き合い。いくつかのヒント
支店長や担当者が変わると金融機関の方針や営業の仕方が変わります。自社に合った金融機関は1社のみならず常に数社と接触しておくことが望まれます。
☆ 支店・支店長によるわが社の評価
守りの支店(長) ・・・ 大型支店、本部に近い支店 ⇒ リスクを取らない
攻めの支店(長) ・・・ 新規支店、他県名称の支店 ⇒ リスクを取る
☆ 支店の大きさ = 決済枠の大きさ
大型支店は設備投資
小型支店は運転資金
お客さまの声